【脱炭素経営の前線から 16】

「収益を実現する再エネの時代へ」

アビームコンサルティング(株)
産業インフラビジネスユニット ダイレクター 山本英夫氏

開催せまる11月脱炭素経営EXPO(関西)。今回は、同時開催セミナーに初登壇となるアビームコンサルティング・山本英夫氏のインタビューをお届けします。コンサルティングファームの強みを生かした脱炭素経営サポートに関するトピックスや、欧州エネルギー危機以降に急速に変化した再エネ市場への対策など、興味深いお話が続きます。みなさま、ぜひご一読ください。

・プロフィール【山本 英夫】

大手都市ガス会社を経て、2001年入社。
エネルギー供給企業とエネルギー需要家企業が関係する領域を専門分野として、エネルギー需要家に対するエネルギーマネジメント改善や新規エネルギー事業立上げ支援など数多くのプロジェクトを実施。
また電力・ガス・石油等のエネルギー供給企業に対しても営業・マーケティング戦略、新規エネルギー事業構築支援等のプロジェクトを実施。
現在、英国Delta Energy & Environment社との連携により、欧州の海外先進事例に基づき「デジタル」「フレキリビシティ」を活用した新規エネルギービジネスモデル構築に関する支援多数実施。

 

■専門部隊を作り、組織横断で支援

―山本さんはエネルギー分野の経営支援を専門とされておられます。これまでのご経歴をお聞かせください。

山本 アビームコンサルティングに入社する以前は大手都市ガス会社におり、2001年の当社入社以来、電力・ガス・石油といったエネルギー業界のコンサルティングを担当しています。エネルギー会社が行う営業・マーケティングや顧客管理業務変革支援、新ビジネスや新サービスの立ち上げサポートといったプロジェクトを長く経験してきました。さらに、エネルギーを使う側のお客様、つまり需要家と呼ばれる企業に向けた、CO2削減を含めたエネルギーマネジメント支援コンサルティングもリードしています。

 

―エネルギーを作る上流にいらっしゃった経験と同時に需要家への対応もされていて、川上、川下のそれぞれの知見を持っていらっしゃるわけですね。2022年現在、需要家としての日本企業の動きは大きく変わってきたと思われますか。

山本 そうですね。CO2削減への対応だけでなく昨今のエネルギー価格上昇の問題も加わり、需要家の動きが変化していると感じます。再生可能エネルギーの導入が増えているわけですが、そうすると電力系統全体として「需要と供給のバランスをどうとるのか」が非常に難しくなり、今後の課題となっています。アグリゲーターと呼ばれるまとめ役が、需要家と電力会社を結んで需要と供給のバランスが崩れないように調整する「デマンド レスポンス(DR)」などのビジネスも誕生し、話題となっています。バランスがとれないとエネルギー政策上、国も困るわけですし、今後も需要家を取り込んでいく内容の新しい制度や仕組みが増えていくのではないでしょうか。

―アビームコンサルティングでは、この流れに対してどのような動きをされているのですか。

山本 「化石燃料や電力」から「再生可能エネルギーや脱炭素ガス」へと転換する「グリーン トランスフォーメーション(GX)」の高まりに注目し、「グリーン エナジー トランスフォーメーション」という部隊を社内に作り、私が全体をリードしています。GXはエネルギーを使う企業であれば業種を問わず影響があることから、この部隊は組織横断的に動けるようになっています。

部隊の担当領域は大きく3つあります。1つめは、旧一般電気事業者様や電気会社様を対象にした、エネルギー業界の大きな変化に伴う経営基盤の再構築で、従来のコンサルティングサービスを提供しています。2つめは、先にあげたアグリゲーターやデマンド レスポンスなどに代表される新ビジネスの立ち上げ支援です。需要家の設備(生産プロセス、自家発、蓄電池、EVなど)を使って送配電会社や電力市場側に価値を提供するビジネスです。この新ビジネスに参入するのは、エネルギー会社だけではありません。需要家みずからが新ビジネスを構築する動きやリース会社などの関連プレーヤーが参入する動きもあります。3つめは、温室効果ガス削減を考える需要家向けに、2050年問題に向けた継続的なサポートを行っています。

 

■経営とGXの両立を、セミナーとブースで紹介

―アビームコンサルティングは、エネルギー企業と需要家の双方が顧客にいらっしゃいます。11月脱炭素経営EXPOセミナー講演では、どちらに向けたお話となるのでしょうか。

山本 両方の視点からお話しいたします。まずは需要家を中心に、市場が大きく変化する中で、GXをどのように企業経営に適応していくのかについて、コストダウンや新規事業による売り上げ増加なども踏まえた視点でお話しします。また需要家側のニーズが変化したことで、結果的にエネルギー会社もまた変革が求められています。エネルギー会社は今後、何をすべきなのかをお伝えします。

 

―需要家が、脱炭素経営に向けて第一歩を進めたいと考えるときに、意識すべき点、改革すべきポイントを教えてください。

山本 まずは、自社のCO2排出量を可視化することが第一のステップです。そのうえで、「どのように削減をしていくか」をロードマップで作る必要があります。どの領域もまんべんなくでは、十分に力を入れることができません。どこが一番脱炭素経営に効く領域なのかを見極めることが必要です。取り組みやすい部分や費用的に負担なくできる部分を抽出して、例えば何年までにどの事業・部門に、どのような対策を実施していくのかという、時間軸で優先順位を作ったロードマップから、すべては始まります。

そしてロードマップを作成しても実行する組織や仕組みがないと「絵に描いた餅」になりますから、マネジメントを含めて実行できる体制を社内に作ることも重要なポイントです。そこには当然、予算がついていなければなりません。予算を確保のルールを決め、目標を事業部ごとに持たせます。目標達成のためのインセンティブがあるような仕組みを、取り組みの裏側でしっかりと作ったうえで実行することが大切です。例えば「サスティナビリティ部門がCO2排出量の可視化をした。しかしその後は仕組みも予算もないので対策できません。」と、構想を描いただけに留まった会社も実際のところ少なくありません。脱炭素経営では、物理的な対策だけでなくマネジメントの仕組み作りが、重要なポイントであると当社は考えています。

 

―なるほど。アビームコンサルティングの強みは、どこにあるとお考えですか。

山本 当社はコンサルティングファームとしてクライアントのさまざまな経営課題を解決しています。なかでも脱炭素化は重要な経営課題であり、「企業戦略に基づく事業成長の実現」と「カーボンニュートラルの実現」を両立させることを私たちの支援のポリシーとしています。先に申し上げた通り、今、エネルギー市場が大きく動いており、また、新たなビジネスチャンスも生まれています。CO2削減だけではなく、収益や利益を生み出せる部分がないかを含めて、全体的な戦略を作っていくことが、他社とは大きく違う部分であり、強みだと思います。

 

―山本さんからみて、脱炭素経営がうまくいく企業とそうでない企業の違いは、どこにあると思いますか?

山本 需要家視点であれば、一番重要なのは経営層がコミットメントしているかどうかです。うまくいっているケースは、実現のための予算や人、体制など、マネジメントサイクルが回る仕組みがあります。経営層のコミットメントがない会社の場合は、目標は立てても予算があまりついてない、担当部門の社員一人でやっている、他の部門の協力が得られずに進まない、といったお話をよく聞きます。

 

―11月脱炭素経営EXPOセミナーでの講演は、今、直接の担当者さんご本人はもちろん、長期的な経営ビジョンを描ける立場の方にぜひ聞いていただきたいですね。セミナーと合わせて、今回はブース出展も予定されていますが、内容は決まっていますか。

山本 需要家の経営とGXを両立して実現する、当社のソリューションを見ていただきたいと考えています。さらにセミナーでは、欧州から起きた現在のエネルギー価格上昇問題の影響を踏まえた脱炭素経営対応についてお話しいたします。将来的に化石燃料価格が高止まりしそうだという予測が立っている今、逆に再エネを長期で確保していくことがリスクヘッジになるという考えが出てきています。ロシア問題も契機となり、ヨーロッパもさらに再エネにシフトしている世界的な動きの中で、一企業としてどう戦略をとるべきなのか。コーポレートPPA(Corporate Power Purchase Agreement:電力購入契約)といった新たな再エネ調達スキームも含めて、お話しできればと考えています。

 

■【関西】 脱炭素経営EXPO

会期:2022年11月16日(水)~18日(金)10時~17時
会場:インテックス大阪
主催:RX Japan 株式会社

※10月5日現在。最新情報は展示会HPをご確認ください

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